コミケに初参加した鉄道研究会はどこか?

2018年の冬コミ(C96)の後、ツイッター上でコミケに初参加した鉄道研究会はどこか話題になりました。立命館大学鉄道研究会のOBである友人は「立命鉄研が最初と聞いた」と言うので「ほんまかいな」と思い、実際に調べてみました。コミケの歴史を研究している人は何人もいますが、鉄道島の歴史を研究したのは今回が初めてではないでしょうか。

※調査自体は2019年1~2月頃に実施しました。この記事は1年前に私の同人ブログで書いた記事を加筆したものです。

調査方法

歴代のコミケカタログを閲覧、大学鉄研を抽出・リスト化しました。今回の調査で使用したコミケカタログは下記のとおりです。

C76~C98

私所有のカタログです。私は2009年の夏コミ(C76)で初めてコミケに一般参加し、翌2010年の夏コミ(C78)で初サークル参加しました。その時は現役の鉄研会員だったので、鉄道研究会名義で参加しました。

C48~C75

先輩同人仲間からカタログを貸してもらいました。

コミケがビックサイトに移ったばかりの頃の貴重なカタログです。

 

晴海から有明へ、もうあれから四半世紀たつのですね。

C21~C47

京都国際漫画ミュージアム収蔵のカタログを閲覧しました。

蔵書は撮影禁止なので、ひたすらメモしました。

 

調査過程

コミケカタログ一冊一冊開いてはひたすらエクセルに入力しました。

・鉄研有志や個人名義で参加するサークルもあったため、サークルカットで大学鉄研であることがわかるサークルを鉄研サークルとカウントしました。

・せっかくなのでサークルカットに書いてある範囲で機関紙名と特集内容も拾い上げました。

調査結果

構想3週間、調査1か月かけ判明した結果は次のとおりです。

 

コミケに初参加した鉄道研究会は

 

立命館大学鉄道研究会

名古屋工業大学鉄道研究会

 

です。

ちくしょー、立命鉄研OBの友人が言っていたことは半分あたっていたし。2つの大学鉄研が最初にサークルカットに登場したのは1989年夏コミ(C36)です。配布物は名工大鉄研が機関誌「連結車」、立命鉄研は記載なしですが、おそらくポイント23か24と推測します。ちなみに立命鉄研は有志名義でした。さすがコミケットトレイン(関西の売り子を東京へ輸送する列車)運行の中心人物を輩出した鉄研です。

2020/4/7追記

当時の鉄研参加の経緯を知るManabu INOUE(@kasobus)さんより、貴重な証言をいただいたので紹介します。


 

 


なんと、当時の立命鉄研の中の人はコミケ初参加の鉄研は名工大鉄研と認識しているそうです。立命鉄研はあくまでも有志での参加とのこと。1980年終わりまで、鉄道趣味と漫画アニメ趣味は系統が分かれており、別々の趣味として認識されていました。そのため、鉄研内部にコミケに参加するのに反対の声が多く、個人でサークル参加し、そこに機関誌を委託する形で配布していたそうです。

 

 

先のツイート対し、当時の名工大鉄研の中の人が参加の経緯を記載してくれました。1989年夏コミ(C36)において、立命鉄研と名工大鉄研が同時のコミケに参加したのは偶然の一致だそうです。

 

 

 

調査してわかったこと

C36~C98の63回のコミケで、

・コミケにサークル参加したことがある鉄研は38校です。※同大学でも学部ごとの鉄研で参加しているところはそれぞれ集計、例:日本大学生産工学部、理工学部、文理学部。

・1989年夏コミ(C36)~2001年冬コミ(C61)の間はサークル参加する鉄研は1~4校でしたが、2002年夏コミ(C62)は7校がサークル参加しています。これ以降、サークル参加する鉄研は増えていき、2012年夏コミ(C82)以降は毎回2桁の鉄研がサークル参加しています。1989年夏コミ(C36)~1992年冬コミ(C43)の間は名古屋工業大学と立命館大学の2校しか参加しておらず、1993年夏コミ(C44)で大阪産業大学、1994年夏コミ(C46)で法政大学と金沢大学、1994年冬コミ(C47)で日本大学がサークル参加しました。

・2017年冬コミ(C92)ではコミケ史上最多の18校がサークル参加しました。

・1996年夏コミ(C50)でビックサイトに移転後、鉄道島は東ホールに24回、西ホールに25回配置されました。

・コミケのジャンルコードに「鉄道」が登場したのは2001年夏コミ(C60)からです。

・短い期間に集中して数回しか参加していない鉄研も多くあります。これは当時、コミケに理解がある会員がいた影響でしょうか。(私の出身鉄研がまさにそれです。)

コミケ参加鉄研ランキング

C36~C98の63回のコミケで10回以上参加している鉄研を表にしました。コミケにもっとも多くサークル参加した鉄研は「立命鉄研」で46回です。二番目は27回の電気通信大学鉄研、三番目は21回の北海道大学鉄道研究会、四番目は20回の筑波大学旅と鉄道の会です。

順位 大学名 回数
1 立命館大学鉄道研究会 46
2 電気通信大学鉄道研究会 27
3 北海道大学鉄道研究会 21
4 筑波大学旅と鉄道の会 20
5 東洋大学鉄道研究会 19
6 大阪産業大学鉄道研究部 18
7 京都大学鉄道研究会 16
8 学習院大学鉄道研究会

法政大学鉄道研究会(小金井)

金沢大学鉄道愛好会(金沢工業大学)(X’PRESS)

15
9 早稲田大学鉄道研究会

名古屋大学鉄道研究会

14
10 法政大学鉄道研究会 11
11 旭川医科大学旅と鉄道研究会

東京都市大学鉄道研究部

10

コミケは東京開催なので全体の参加鉄研は関東の大学が多いです。その中で地方の大学は回数でそれなりに存在感を出しています。20回以上ですと常連ですね。

 

歴代参加大学鉄研一覧図

※クリックで拡大可

2009年以降、参加鉄研が増えていくのがわかります。この頃は2000年前後の鉄研冬の時代(各鉄研の会員数が減り、多くの大学鉄研がつぶれました)が終わり、世の中の鉄道ブームとともに各鉄研の会員が増えていた時期でもあります。ここ最近、参加数が減っているのが気になります。コミケ4日開催の影響でしょうか。

 

鉄道島はいつ誕生したか

今回の調査の副産物として、今や611ジャンルの一大勢力になっている鉄道島がいつ誕生したかも判明しました。鉄道島とはジャンルコード611「鉄道・旅行・メカミリ」の中の鉄道系サークルが集まっているエリアのことです。

 

鉄道島の誕生は1987年冬コミ(C33)です。

 

鉄道島と思われる姿が確認できたのは鉄研初登場の3回前の1987年冬コミ(C33)です。この時、鉄道系サークルが2つ、バス系サークルが1つでした。ちなみに、コミケ初のバス系サークルは「都っケミコ」という都バスを扱ったサークルで、ご丁寧にサークルカットにコミケ初のバスサークルと書いてありました。ちなみに、この時創作島の位置エリアだった。1988年夏コミ(C34)では鉄道系サークルが4つ、バス系サークルが2つとこれ以降会を重ねるごとに規模を拡大していきました。

 

C33・C34での鉄道島は「創作」ジャンル、1988年冬コミ(C35)ではコンピューター・ゲームジャンル、1989年夏コミ(C36)以降はメカ・ミリタリジャンル、ジャンルコードに「鉄道」の文字が入るようになったのは2001年夏コミ(C60)からで鉄道島誕生から14年後でした。

 

1987年夏コミ(C32)でも鉄道系サークルがないかサークルカットをめくってみたら「鉄道」の文字をカットに入れたサークルが見つかりました。
次の2つが私が確認した中で最古の鉄道系サークルです。

 

・B-30 関西漫画鉄道趣味者組合

・C-58 Factory・みきすと

 

 

なお、時間の都合上、C35以前は鉄道系サークルが参加してそうな創作ジャンルを中心に調べており、サークルカットをすべて確認できていないため、見落としている可能性があります。その場合はコメント等で指摘していただけたら幸いだ。調査は1985年夏コミ(C28)まで行いました。

 

鉄道島年表

・1986年夏コミ(C30)(晴海) コミケットトレイン運行開始
・1986年夏コミ(C31)(TRC)
・1987年夏コミ(C32)(TRC) 鉄道系サークル初登場(これ以前から鉄道本を配布していたサークル自体はあった。)
・1987年冬コミ(C33)(TRC) 鉄道系サークルが3サークルになり、初の鉄道島三本締めが行われる。
・1988年夏コミ(C34)(晴海)
・1988年冬コミ(C35)(晴海) 鉄道島が形成される。(C34orC35)
・1989年夏コミ(C36)(晴海) 鉄研初登場
・1989年冬コミ(C37)(幕張)
・2001年夏コミ(C60) ジャンルコードに「鉄道」登場
・2008年夏コミ(C74) コミケットトレイン運行終了
・2009年以降        鉄研の参加が増える。
・2017年冬コミ(C93) 鉄研最多の17校が参加
・2019年夏コミ(C96) 一斉点検時に手拍子をするようになる。

考察

今回の調査を終えて、鉄道研究会は鉄道島の核で、人材育成の中心的存在あることを再認識しました。大学生時代に鉄研としてコミケにサークル参加し、同人誌作成やサークル運営のノウハウを学んで、大学卒業後も創作活動を続けているサークルがみられます。鉄道島の有名サークルの中には鉄研出身者もおり、例えば台湾時刻表で有名なNITTETSUREN(@NITTETSUREN )さんは1997年~1998年に大阪産業大学鉄道研究弘済会としてコミケに参加しています。2019年冬コミ(C97)においても私の出身鉄研や関西・中部・関東学鉄連つながりの先輩後輩知人がサークル参加やスタッフとしていました。

大学・高校の漫画研究会(学漫)はスタッフ側・参加側両方でコミケ創設期を支えた話は有名ですが、鉄研も鉄道島創設期において、コミケや同人即売会に「鉄道」というジャンルを広めた功績者だと思います。今後も鉄道ジャンルが盛り上がることを願い、調査報告とさせていただきます。

 

 

 

作成資料

今回の調査で作成した「コミケ参加歴代鉄研」のエクセルデータを公開します。各種研究資料にお使いください。鉄道島の歴史、誰か研究してくれないかなー(他人依存)。

 

 

アンケート調査

今回の考察で、鉄道島のサークルは鉄研出身者が多い、鉄研は鉄道島およびコミケの同人作家を育成し、輩出する人材育成機関だと書きましたが、実際どうなのかツイッター上でアンケートを取ってみました。2020年GWコミ(C98)において、鉄道島は約300サークルで成り立っています(女性向け含む)。その中で半数近くの約144人から回答があったのは高回答率だと思います。

※高校鉄研出身は高卒・専門学校卒を想定しています。複数人でサークルを運営している場合、メンバーに鉄研出身者がいれば「鉄研出身」にチェックをいれてもらいました。

〇アンケートの結果

・8%  高校鉄研出身(高専含む)

・31% 大学鉄研出身(短大含む)

・13% 高校・大学両鉄研出身

・48%   鉄研出身ではない

 

なんと、鉄道島の半数近くのサークルが鉄研出身者であることがわかりました。高校・大学両鉄研出身というエリートコース履修者も1割います。非鉄研出身者も鉄研出身者から同人誌製作・サークル運営のノウハウ指導を受けているサークルも一定数いるため、鉄研は同人作家の人材育成機関という仮説を補強するアンケート結果だと思います。

 

 

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